Masumi Lacoste

お産体験記その3

病院でのお産体験

夕方に山科から白川のバプテスト病院へ、夫の運転する車にて堀口先生も同行で移動した。数回陣痛が来たが、余りきついものではなかった。陣痛が来たら、先生が、「そう、逃がして。ふー、すぐ無くなるからねー」と誘導してくれた。病院の入り口まで来たら、先生が車いすを取って来てくれて、車いすで分娩室に向かう。初めて。車いすに乗ったのは。

分娩室はベットが置いてあり、すぐに赤ちゃんの様子と陣痛を調べる分娩監視装置をつける。仰向けになっているとしんどかったので横向きでつけてもらえた。勿論そ間も陣痛がやってくる。病院では、わたしが陣痛で苦しんでいる時、さすってもらったり、「大丈夫?がんばってね」などという言葉掛けは殆ど無かった。又自分から聞くまで呼吸を指導してもらう事も無かった。のは、わたしが助産院から来たからすでに知っているだろう、と思っての事だったのか、皆さんにそうなのかは分からない。だが、実は、この時にはそれが気が楽だった。一人で冷静に静かに居たかった。

部長さんのお医者さんが、「お母さんの状態も赤ちゃんの心拍も大丈夫だから、明日の朝9時頃まで待って子宮口が全開してなかったら、陣痛促進剤を使う事を考えようか」と言った。「ええ?まじで?こりゃあがんばらないと」と焦った。促進剤を使うとめちゃ痛い陣痛が来るって聞いてたし、出来るだけ自然に産みたかったから。しかもなぜか白いタイツを履かされる。きつそうだし「嫌だー!」って思ってたのだけど、履いてみると、以外に「あら?らくちん。痛みもひいたわー」って。長時間のお産にて足がつりかけたりしてかなり痛かったのだけど、それが引いたんだよね。すごいね。あれ、また飛行機のエコノミー症候群予防に飛行機で履いてみようっと。

来てすぐに視装置をつける前から、早速ブドウ糖の点滴をしてもらったのだが、それが1/4終わるかどうかというところから既に自分で分かるくらい体力が戻ってきた。お腹も減ってきて、ケビンに病院のコンビニでリンゴジュースと梅のおかゆを買ってきてもらって食べたりも出来た。場所も移動したからか、目も覚めた。そこからケビン監督の出番。ケビンが「もうタイムリミットが近づいてきたから、これからはアクティブバースだ!がんばろーー!」ってスパルタ状態。ベットの上から私を起こさせて、階段を上り下りさせたり、外に出てまだまだ満月に近い綺麗な月を見ながら月礼拝体操をしてみたり。陣痛が来たら、立ちながらケビンの首にぶら下がったり、テーブルに手をついてスクワットしながら息んだり。

そして助産士さんに内診してもらったら、「あら、子宮口全開してるわよ。あとはこの調子で破水したら朝までに産まれるわよ」って言ってもらえた。それまではその助産士さんは、「お産、朝までは無理かもね」って言ってはったから、めちゃ嬉しかった。

そしてしばらく部屋の中を歩いたり、四つん這いで息んだりしていたら、じょーーっと水の様なものが流れた。「おおお!これが破水か!」とボタンを押して助産士さんを呼んで調べてもらったら、「やったわね、破水したよ。しかもだいぶ赤ちゃん降りてきてるよ。これはもうすぐ産まれるわね。わたしのバディー達を呼んで来るね」と他の助産士さんたちを呼んでお産の用意をしだす。もう心の中はうきうき。もちろん陣痛は痛いけど、やっと産まれる!と思うと心は躍る。

ここの助産士さんは先ほども言ったけど、さすったり、声かけはしてくれないのだけど、的確に息み方などを教えてくれる。そしてめちゃくちゃクール。でもわたし、その助産士さんに憧れてしまうくらいかっこ良かった。教え方も的確で分かり易いし、綺麗だし、たまに見せてくれる笑顔が素敵。その時のわたしにはあれくらいのクールな助産士さんと相性が合ったみたい。

ベットで仰向けに息むのは嫌だったのだけど、やってみるとなかなか息み易いの。そして教えてもらったやり方でやると、力を入れて息まなくても良いんだなこれが。陣痛は横向きで寝ている方が、強いのが短い間隔で来ると体感していたので、待っている間は横向きにさせてもらった。これまでの長時間のお産で、どの体勢がどう良いのか、どうやって休むのか、などばっちり習得した。しんどかったけど、あれも体験やったなあ。人生すべて体験なりね。

そしてずんずん赤ちゃんが降りて来る間隔があって、ついにお医者さんも呼ばれ、手で触ると赤ちゃんの頭の毛が触れるところまで来た。赤ちゃんは髪の毛ふさふさで、なんかプルーンでも触っている様な感触だった。鼻からスイカってよく表現されるが、別に凄く痛いというのでは無かった。「苦しいなー」感じだったけど、それよりももっと「赤ちゃんが苦しそうやなー」って心配やった。でも心拍が元気だったから、お医者さんもゆっくりと待ってくれた。

しかし、お産最後になってきて、お産の用意がされて、電気がこうこうと照らされ、まぶしいので目には自分のタオルをのせて、長時間のお産だったので、最後の方は酸素マスクをつけさせられ、青いシーツを上にかけられ、白いタイツを履かされ、足置きに足をのせられた状態。しかも下の部分は丸出しで赤ちゃんの頭が見えてる。ケビン、その状態を見るのが怖かったらしい。なんか手術をするみたいで、ぞくーっとしたそうだ。でもわたしは見えてなかったからか、以外にも快適だった。さすが病院、ばっちり無駄無く用意されてるわーって安心感があって悪くなかったな。

さて、もう頭のてっぺんがずいぶん出てきだした。そろそろ産まれそうになってきて、ケビンは毎回の陣痛の度に、iPhoneのビデオを回す。そのスタートの音、ピーンって音がすると、「よし、気張るでえ」と気合いが入った。へんなの。ケビンは変な雄叫びを小さくささやいていた。「凄いー!ますがんばれー!」っても言ってくれてた。

自分が持ってきてた、馬油を助産士さんに渡したら、ずっと一生懸命、会陰が破れないようにマッサージしてくれていた。しかし、会陰がいっぱいいっぱいに広がって、陣痛が来てもそこからなかなか進まない。お医者さんが「頭がかなり大きいね。しかも陣痛間隔長いし、ちょこっと切ったらすぐに産まれるよ」って言う。「いえ、切りたくないです」と粘っていたが、もうぱつぱつでマッサージしてもらっていても、「ああ、こりゃあ破れるな。破れた方が痛そうやな。赤ちゃんもしんどそうやな」と冷静に判断し「ではちょこっと切ってください」と言う。そして麻酔注射を数本してもらい、ピッと切られるが、痛みは殆どなし。後で思うとあのタイミングで切ってもらって本当に良かった。絶対に切りたくないと通告していたので、マッサージもしてもらえていたし、切ったところ以外は損傷は全し。

そして、次の陣痛でドバッと頭が出て、もう一回の息みで産まれたーーーー!いえーーい!やったーーー!

産まれた瞬間はめちゃ気持ち良かった。もう陣痛の痛みは全くないし、スッキリして、最高!ってな気分。長時間かかって、ついに産めたから、もう満足感と安堵感に包まれた。

すぐにお腹に赤ちゃんを持ってきてもらって、パパがへその緒を切った。大きい、そしてめちゃ重い。こんな重い赤ちゃんがお腹にずっと居たんだ。信じられない。


わたしの赤ちゃん、時間がかかってごめんね。良く産まれてきてくれたね。

ありがとう。ありがとう。

体は分かれたけどこれからもずっと一緒だね。

ママも、パパもあなたの事が既に大大大好きよ。